研究概要 |
本研究は,18世紀の近世アジア間貿易の構造とその変容の解明を試みるものである。オランダ東インド会社が業務上作成した各種の記録という,いわば貿易統計史料を主に駆使することによって,近世アジアにおける国際分業の実態を把握することを意図している。 本年度においては,オランダ東インド会社の取り扱った主要商品のアジア内での流通を分析し,近世アジア間貿易の構造を捉えることを課題とした。具体的には,オランダ国立公文書館等に出張の上,史料を収集し,殊に一部はマイクロフィルムとして入手し,分析を行った。全ての年度の貿易統計の収集は時間的に不可能であるため,100年を5期に分け,代表年を選び,18世紀における各地商館の会計諸記録の要約である『バタヴィア経理局長文書』からデータを収集した。また,これと平行して,文章情報からの貿易・市場分析として,バタヴィア政庁の『一般政務報告(原本)』を対象とした分析を行った。 本研究初年度の成果については,本研究代表者は当該年度中に2本の論文(和文)と2項目にわたる事典の項目執筆(英文)を発表したが,これらは本研究が内定を受ける以前に実施した研究に依拠しており,厳密には本研究費による成果とはいえず,本報告書には記載しない。そもそも研究種目上,本研究は初年度7月に内定という特殊な性格を持っているが,内定後の研究成果として,学会・研究会等において4回の口頭報告を行っている。また,論文1本(英文)を作成したが,これは現在,査読審査中である。
|