研究概要 |
本研究は,18世紀の近世アジア間貿易の構造とその変容の解明を試みるものである。オランダ東インド会社が業務上作成した各種の記録という,いわば貿易統計史料を主に駆使することによって,近世アジアにおける国際分業の実態を把握することを意図している。 本年度においては,18世紀にオランダ東インド会社と競合関係にあった中国人やインド人等のアジア人商人,さらには,イギリスやポルトガル等に出自をもつ,いわゆるヨーロッパ系の自由貿易商人による,南アジアから東アジアにわたる大規模な貿易活動の分析を試みた。こうしたアジア間貿易の研究に際し利用した史料は,主にオランダ東インド会社が当時作成した関係業務文書である。オランダのデン・ハーグ市にあるオランダ国立公文書館で関係史料を調査し,一部は特にマイクロフィルムを購入して,必要なデータの収集を実施した。 関連する研究成果としては,本研究代表者は当該年度中に1本の論文(和文)を発表した(「一八世紀末長崎出島におけるアジア人奴隷-オランダ東インド会社の日本貿易に関するひとつの社会史的分析-」(鈴木健夫編『地域間の歴史世界-移動・衝突・融合-』(早稲田大学出版部,2008年)所収))。また,社会経済史学会近畿部会夏季シンポジウムをはじめとした学会・研究会において,5回の口頭報告を行っている。これらのほかに,論文3本(和文2本,英文1本)を作成したが,現在のところ編集・印刷中であり,公表には至っていない。
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