本研究は、数理物理学において重要な役割を果たすヴィラソロ代数の超リー代数としての拡大である、無限次元カルタン型超リー代数の構造論および表現論を、主な研究テーマとしている。平成18年度はその最も簡単かつ基本的な例である、N=1超ヴィラソロ代数の表現論、特にヴァーマ加群の構造とその応用を中心に研究を行った。具体的には以下の結果が得られた: 1)論文「The structure of pre-Verma modules over the N=1 Ramond algebra」においては、N=1超ヴィラソロ代数のラモンドセクターに対して、ヴァーマ加群と同様に誘導表現として定義されるある種の加群(pre-Verma加群)について、ヤンツェンフィルターの構造を明らかにし、その系として、部分加群の分類を得た。 2)論文「Tilting equivalence for superconformal algebras」では、フェイギン・アルキポフ・ゾルゲルによる圏同値を、無限次元のカルタン型超リー代数の場合に適用可能な形に拡張し、更に圏同値を具体的に記述する際に必要となる、臨界コサイクルの決定を行った。 3)「N=1超ヴィラソロ代数を対称性とする共形場理論のフュージョン代数の構造定数の決定」について、その主要な部分である、ヴァーマ加群の特異ベクトル公式に関して研究を行った。この研究に関しては、必要な特異ベクトル公式の複雑さのため、平成18年度中には研究が完了しなかった。そのため平成19年度に引き続き研究を行う予定である。
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