本研究では、ヴィラソロ代数を部分代数として含む無限次元単純超リー代数の興味深いクラスである、カルタン型超リー代数(超ヴィラソロ代数)の構造論および表現論を主な研究テーマとしている。平成19年度は、フランスのリヨン大学の庵原氏との共同研究として、「N=1超ヴィラソロ代数を対称性とする共形場理論のフュージョン代数の構造定数の決定」を行った。 超対称性をもつ共形場理論のフュージョン代数の構造に関する数学的な立場からの研究としては、ヌブ・シュワルツセクターに制限した場合には、いくつかの先行する研究が知られているが、ラモンドセクターも含む形でフージョン代数の構造を取り扱った本研究に先行する研究は、ほとんど知られていない状況であった。今年度の研究の目的は、そのような超対称性をもつ(特に、超ヴィラソロ代数を対称性とする)共形場理論を数学的な立場から研究して行く上で必要となると思われる具体例の一つを与えることにあった。 具体的には、平成18年度までの計画で完了していなかった (1)ラモンド超代数上のヴァーマ加群の特異ベクトル公式の導出を行い、得られた公式を用いて、 (2)ヌヴ・シュワルツとラモンドの両セクターをふくむ共形場理論のフュージョン代数の構造を決定を行った。この研究結果に関しては、現時点で論文を執筆中である。なお、(1)の研究の実施のためには、十分な処理能力を持つ計算機と数式処理ソフトの使用が必要不可欠であったため、今年度の補助金は計算機の購入(マッキントッシュ)や数式処理ソフト(メイプル)のバージョンアップ、共同研究者との研究連絡のための旅費などに用いられた。
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