研究概要 |
高次元Auslander-Reiten理論として、$n$-クラスター傾部分圏(=極大$(n-1)$-直交部分圏)を調べた。 本年度は、$n$-クラスター傾加群をもつ有限次元多元環の帰納的構成を与えた。即ち、ある条件を満たす$n$-クラスター傾加群を持つ有限次元多環として「$n$-完備多元環」を導入し、$n$-完備多元環上の$n$-クラスター傾加群の自己準同型環は、$(n+1)$-完備多元環である事を証明した。$1$-完備多元環はDynkin型の道多元環と同値であるが、上記の方法で構成される$n$-完備多元環のクイバーと関係式も記述した。クイバーは$n$次元格子の構造を持ち、関係式はKoszul複体における可換関係式で与えられる。$n>1$の場合の$n$-完備多元環の例は非常にたくさん存在する事が分かっており、導来圏への応用も含めて現在も引き続き研究中である。 またBuan, Reiten, Smithとの共同研究で、$2$-Calabi-Yau三角圏における$2$-クラスター傾対象の変異に関して幾つかの結果を得たが、それらを2月のOberwolfach研究所の集会で発表した。 8月の第12回多元環の表現論(ICRA XII)国際集会のワークショップでは3回の全体講演を行い、第一回ICRA Awardを受賞した。受賞題目は「Higher theory for almost split sequences and Auslander correspondence, and subsequent work on Calabi-Yau categories」であり、数年間にわたって研究した高次元Auslander-Reiten理論に対してのものである。サーベイがICRA XII報告集に掲載予定。 3月の日本数学会年会では代数学賞を受賞した。受賞題目は「高次Auslander-Reiten理論の研究」
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