研究概要 |
今年度は主に2つの課題の研究を行なった。第1の課題はp進数体上のMahler関数の特殊値に帰着可能なp進収束級数の構成,第2の課題は標数正の関数体上超越的なMahler関数の構成である。p進数体及び関数体上の超越数論研究の基礎をなすディオファンタス近似の諸結果を整数論サマースクールにおいて調査し,また,フィボナッチ数列の部分級数の逆数和及び解析関数の相異なる代数点における値の代数的独立性の研究手法を応用して研究を進めた。 第1の課題についてはフィボナッチ数列を例として含む線形回帰整数列{R(n)}_<n【greater than or equal】0>の,公比が素数pの等比数列に対応する部分列{R(ap^k)}_<k【greater than or equal】0>のp進数体Q_pにおける極限値の数論的性質を研究した。その結果{R(n)}_<n【greater than or equal】0>がフィボナッチ数列と同様にm|nならばR(m)|R(n)という強整除性を有する場合には{R(apk)}_<k【greater than or equal】0>のQ_pにおける極限値はQ上代数的であり,1の冪根により表される数であることが分かった。この結果の一般化を検討した上で論文としてまとめる。 第2の課題に関し,CIRM(マルセイユ)での研究集会における討論を通して,標数正の関数体上超越的なMahler関数の実例は現在のところ対数関数に起因するもの以外は未発見であることが分かった。これは,標数正の関数体上のMahler関数の研究が本質的な困難を内包するものであることを意味している。また,CIRMでの研究集会ではPeter Bundschuh氏,Federico Pellarin氏と2階のMahler型関数方程式の解空間の構造について標数正の関数体上の場合も含めたディスカッションを行ない,研究代表者はそのような関数方程式をみたす関数の具体例を得た。それは,ある種の複素連分数で表せるMahler関数であり,研究代表者はそれを行列関数の無限積として表現する方法を発見した。この結果に更なる検討を加えつつ論文を執筆中である。
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