研究概要 |
グレブナー基底の理論を活用して,有限群の不変式に纏わるイデアルや,対称性の高い生成系を持つイデアルなどを解析し,不変式環の構造の解明や,符号理論などの情報科学への応用を目的として研究を行った。 本年度の研究では,昨年度に引き続き,豊かな対称性を持つ配置として,Segre-Veronese型配置について研究した。拡張されたSegre-Veronese型配置とは,変数からなるブロックを幾つか用意し(ただし,ブロック同士に共通する変数があってもよい),ブロックごとにVeronese型であるような配置であり,Segre積,Veronese部分環など,伝統的な配置を含んだ重要なクラスである。この配置のトーリックイデアルは2次の2項式からなるグレブナー基底を持つが,これは例えば,センター試験における科目の選択などの統計的分析に活用することができる。本年度はこの概念をさらに発展させ,このような操作をネストするような配置を定義した。このネストされた配置のトーリックイデアルは,もとの配置が2次のグレブナー基底をもてば,ある単項式順序に関して2次のグレブナー基底をもつことが判明した。このグレブナー基底を,マルコフ連鎖モンテカルロ法を適用する際のいわゆるマルコフ基底として用いることによって,さきほど述べた応用が適用できる統計的問題の範囲が格段に広がった。また,今後は,これを環論的操作と捉えて,どのような環論的性質が遺伝するかなどを研究すれば,不変式に纏わる様々な環論的問題への応用が期待できると思われる。
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