ビルディングブロックはQ曲線やGL_2-typeのアーベル多様体を一般化した代数体上定義されたアーベル多様体である。昨年度、Q曲線の有理的ねじれ群についての結果を山内卓也氏との共同研究で得た。本年度は学術論文を準備、現在投稿中である。本結果については、10月の室蘭整数論集会で口頭発表を行った。 4月以降、代数曲線のヤコビ多様体の形式群の構造を調べ、Q上定義されたモジュラー曲線に関するFreijeの結果を、代数体上定義された代数曲線の場合に一般化した。また、超楕円曲線のヤコビ多様体の形式群の整数環上のモデルを構築した。種数1の場合は古典的に、種数2の場合は、Flynn、Grantにより形式群のモデルが知られていたが、任意の種数に関して、モデルを構築した点が新しい。 応用であるが、超楕円曲線のヤコビ多様体がビルディングブロックになる場合には、ヤコビ多様体のλ進表現のL級数が、形式群を用いて、代数的に計算できる。例えば、種数2のBrumer-Hashimotoの超楕円曲線の族はこのような超楕円曲線の一例である。モジュラー曲線のヤコビ多様体のλ進表現のL級数は解析的な計算法が知られていたが、次元2以上のビルディングブロックに対する代数的な計算法は新しい。また、本科学研究費の支援により導入したコンピューターを用いて、多くの数値例を得た。本結果については、3月の早稲田大学整数論集会にて口頭発表する。 また、最新の研究成果交換の場として開催された広島整数論集会に世話人として参加した。本科学研究費の支援により、代数曲線やビルディングブロックに関し、大西良博氏らと研究打ち合わせを行った。この議論の成果は次年度の整数論サマースクールにいかされる。
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