研究概要 |
本年度の研究成果は以下の通りである.まず昨年度までの非正曲率距離空間の位相構造に関する研究成果が,別記の通り研究論文1編として今年度出版の学術雑誌に掲載されたことを報告する.また昨年度に引き続き,lytchak氏(ポン大学)との非正曲率距離空間の局所位相正則性やCAT(1)空間に対する球面定理などの一連の共同研究を研究論文の完成に向けて推進した.さらに今年度はKleiner氏,塩谷氏,山口氏との曲率が上に有界な2次元アレキサンドルフ空間の局所構造に関する共同研究で次の定理を得た. 定理.局所コンパクト測地的完備である曲率が上に有界な2次元アレキサンドルフ空間に対して,滑らかな曲面に対する曲率積分の拡張となっている自然な曲率測度が存在する.特に空間が有界な場合,その曲率測度に関するガウス・ボンネの定理が成り立つ.即ち全曲率測度がEuler数の2π倍に等しい. これは1999年に得られたBurago-Buyaloの曲率が上に有界な2次元多面体のガウス・ボンネの定理の拡張となっている.今回のガウス・ボンネの定理は多面体構造を許容しない空間にも適用できるものであり他に類を見ない.これにより,曲率が上に有界な2次元アレキサンドルフ空間の局所構造が完全に記述できたといえよう.本研究内容は研究論文として執筆し然るべき学術雑誌に投稿する予定である. なお本年度を通して,研究実施計画に基づき,国内での研究調査や研究者交流を積極的に行った.さらに海外渡航として,サンクトペテルブルク(ロシア連邦共和国)で開催された国際研究集会「Third Russian-German Geometry Meeting」 に招待講演者として参加し,研究者同士の交流やLytchak氏との研究打ち合わせを行った.
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