4次元ユークリッド空間に埋め込まれた閉曲面を曲面結び目という。曲面結び目が4次元空間においてどれくらい複雑に絡まっているのかを定量的に表現することは、曲面結び目理論における基本的な課題である。特に、本研究において扱った、3重点数やシート数、および彩色性などは重要な指標である。4次元自体は見えないが、それを3次元へ射影することで、曲面結び目の影を調べるという手法を用いて本研究を行った。 1. 非リボンな2次元結び目の3重点数は常に4以上であることが知られている。本研究では、(3彩色カンドルコサイクル不変量に関する)ある条件の下で、3重点数が4である2次元結び目の特徴付けを行った。すなわち、本質的に(リボン同境で割れば)2ツイストスパン三葉結び目だけに限られることを示した。 2. 非自明な2次元結び目のシート数は常に4以上であることを示した。また、カンドル彩色性とシート数、コサイクル不変量とシート数との関係を明らかにすることで、シート数が4、5、6であるような2次元結び目をそれぞれ3個、2個、2個発見した。特にスパン三葉結び目(3重点数0)と2ツイストスパン三葉結び目(3重点数4)が同じシート数4を持つことから、これらの不変量は本質的に異なる量をはかることが分かる。 3. 3次元内の結び目と4次元内の結び目の性質は、多くが似ているが、異なる点も知られている。本研究では、5彩色したときに必要な色の最小値を調べることで、両者の間にギャップがあることを示した。
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