研究概要 |
本年度は, 以下の研究を行なった. 1. グラフの絡み目内在性や結び目内在性の一般化として, グラフが内在的非自明であるとは, その空間埋め込みが必ず非自明な空間部分グラフを含むときと定義した. 2成分絡み目内在であるグラフが内在的非自明であることは定義から明らかであるが, 今回, その逆も成り立つことを示した。即ち, 内存的非自明なグラフの空間埋め込みは必ず非分離な2成分絡み目を含まねばならない. 更に, その空間埋め込みが必ず非分離な3成分絡み目か, もしくは既約な空間手錠グラフでその絡み目成分が分離しているようなものを含むグラフが存在することを示した. これは絡み目内在性や結び目内在性とは本質的に異なる新たな内在的非自明性の例である. 2. Conwav-Gordonは, 任意の空間6頂点完全グラフの絡み目成分の絡み数の総和は, 2を法として考えると1となることを示し, 更に任意の空間7頂点完全グラフのHamilton閉路の像として得られる結び目成分のConwav多項式の2次の係数の総和は, 2を法として考えるとやはり1となることを示した。そこで今回, これらの定理め整数持ち上げを与える公式を見出し, 上記Conway-Gordonの定理を著しく精密化した。また, その結果を用いて, 次に述べる直線型空間グラフの理論への応用を見出した. 3. 全ての辺が線分であるような空間グラフは直線型であると呼ばれる, Alfonsinによって直線型空間7頂点完全グラフは必ず三葉結び目を含むことが示され, また, Huh-Jeonにより, 直線型空間6頂点完全グラフが含み得る非自明な結び目は高々1個の三葉結び目であり, 更に三葉結び目を含まないための必要十分条件は, ただ1つのHopf絡み目を含むことで, 一方, 三葉結び目を含むための必要十分条件は, ちょうど3つのHopf絡み目を含むことであることが示されていた.Alfonsinの証明は有向マトロイド理論と計算機の援用にまる計算幾何学的なものであり, Huh-Jeonの証明もAlfonsinのアイディアに沿った組み合わせ的なものであったのだが, 今回, 結び目と絡み目の棒指数に関する既知の結果と, 上記Conway-Gordonの定理の精密化の応用により, これらの事実に計算機を用いない位相的な証明を与えた.
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