研究概要 |
本研究の目的は,多様体に商特異点を許した軌道体(以下,V-多様体と記す.)におけるゲージ理論を展開することにより,3次元多様体のホモロジースピン同境捻れ不変量を構成し,3次元多様体のホモロジースピン同境単位的半群の構造を解明することにある.特に,3次元多様体のホモロジースピン同境不変量の構成,並びに符号数不足指数型の不変量の相互法則に関する結果を出発点として以下の結果が得られた. 1)重力異常項相殺公式を応用した11次元スピン多様体に対する一般化Rochlin不変量の整数持ち上げの構成 Alvarez-GaumeとWittenによる12次元の重力異常項相殺公式の応用として11次元スピン多様体に対する符号数不足指数型の微分同相不変量を構成した.特にAnderson-Brown-Petersonの結果から11次元スピン同境群が消えていること,並びに整数を法としたスピン同境不変性から,この不変量の値が一般化されたRochlin不変量の整数持ち上げを与えることを示した.さらに,11次元レンズ空間に対する不変量の明示公式をFourier-Dedekind和を用いて与え,重み付き射影空間のV-指数による幾何学的解釈から高次元Dedekind和の相互法則の類似物を証明した.本結果を国際数学者会International Congress of Mathematicians 2006 MADRIDのshort communicationにおいて発表した. 2)グラフ多様体のホモロジースピン同境とカップ積の結合性 グラフ多様体のコホモロジー群の間の環同型が,ホモロジースピン同境によって実現されるための必要条件を決定した.その条件は,一つは古田幹雄氏、亀谷幸生氏による拡張された10/8-不等式のV多様体版を用いるものであり,コホモロジー環の同型の形式的なデータから計算される4重カップ積がその項に現れる.また,一つは,形式的に計算される3重カップ積の結合律の破綻がホモロジー同境の実現のための障害を与えることが明らかとなった.この非結合性を用いて,所謂Massey積の類似物を構成した.
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