研究概要 |
本研究の最終目的は,離散凸解析における技法を用いることにより,非線形整数計画問題の良質な近似解を実用的な時間内に求めるアルゴリズムを提案することである.離散凸解析における既存の研究は,主に「解きやすい」非線形整数計画問題に注目していた.これに対し,本研究課題では,「離散凸近似」という手法を通じて,離散凸解析の枠組みを「解きにくい」非線形整数計画問題へ拡張する,というアプローチをとる.本年度の研究成果は以下の通りである. 本年度はまず,「劣モジュラ関数の最大化」という,基本的であるが計算困難な問題についての研究を行った.ある種の劣モジュラ関数に対して適用可能な既存のアルゴリズムについてその特徴を検討したところ,離散凹性が鍵となっていることがわかった.この知見に基づき,このアルゴリズムがM凹関数の和というクラスに対しても適用可能であることを証明した.さらに,整数格子点上で定義される劣モジュラ関数に対してもこの結果が拡張できることを示した.この結果は,「離散凸性/凹性」というものの見方が非線形整数計画問題において重要であることを示している. 本年度はまた,変数の差に関する非線形整数計画問題である,最小費用テンション問題およびその拡張について取り組んだ.この問題に対し,室田(2003)により提案された貪欲算法が知られているが,このアルゴリズムの反復回数の詳細な解析を行い,既存の反復回数より大幅によい結果を示すことが出来た。この解析においては離散凸解析に関する過去の研究において示された,L凸関数のもつ性質が本質的に効いている.
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