研究概要 |
●研究計画通り,線形放物型方程式に対する考察を始め,特に数値実験による発見的考察を行った.アダプティブメッシュの汎用ソフト等の調査を行った。 ●走化性をもつ細胞性粘菌の凝集現象の数理モデルであるKeller-Segel系を考え,系の基本性質,すなわち正値性保存,質量保存を実現するような差分スキーム(保存的上流差分)を提案した.さらに,同様の趣旨で有限要素スキームの開発を行い,誤差解析を完成させた. ●Keller-Segel系と似た構造を持つ偏微分方程式系として,半導体デバイス問題におけるdrift-diffusin(DD)方程式がある.DD方程式に対する有効な数値解法として,Scharfetter-Gummel(SG)差分スキームという特殊な差分スキームが知られている.このSGスキームは,ある上流型近似と解釈できるものの,その導出は「奇怪」であり,スキームの本質については未解決なところが多い.しかし,SGスキームは,実は,2点境界値問題のGreen関数とその有限次元近似に密接に関わっていて,この観点からは,DD方程式の適切な近似としてSGスキームが自然に導かれることを証明した.
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