研究概要 |
偏微分方程式(PDE)のコンピュータによる数値シミュレーションは, 狭い意味での理工学を超えて, 生命科学, 臨床医学, 経済学にまで応用範囲を拡げ, 幅広く有益な情報(computer predictions)をもたらしている. しかしその一方で, (A)実際的なPDEの数値シミュレーション, (B)PDEの数値的解法の理論的研究, (C)PDEの理論的な研究, の立場の間の溝は深まる傾向にある. (A)と(B)を例に取る. 従来の意味での誤差解析とは, 離散化パラメータhに対してh→0なるときの(厳密解と数値解の)誤差の挙動の解析すなわち誤差の定性的な解析(=事前解析)を意味し, これが証明された時点で誤差解析が完了したことになる. しかし, 実際の数値計算は有限のhに対して行われるものであり, 応用家が知りたいのはあるhに対する誤差の値あるいは範囲といった定量的な情報である. この溝を埋めるために事後解析とアダプティブメッシュ法が発達した. 事後解析では誤差に関する計算可能な(すなわち数値解を用いて表現される)上下界(error indicator, 以後EI)を求める. このEIを用いて誤差が相対的に大きい場所を特定し対象領域のメッシュの細分化(再構築)を行うのがアダプティブメッシュ法である. 結果的に, 指定した許容誤差内の数値解を得ることができる. 本研究では, 線形および非線形放物型時間発展問題の数値近似解に対する事後解析をおこなった.
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