研究課題
結晶状の界面の運動の数学モデルの1つである、クリスタライン運動を扱った。本年度は昨年度までの結果を受けて、解析の対象を界面速度が曲率以外にも強く依存した運動方程式を中心に解析を進めた。特に、非曲率寄与項(バクルからの効果等)が時間に依存するタイプの界面速度の場合を対象とした。このモデルに対して、比較定理を構成し、更に、定常劣解および時間無限大で平面全体に拡大する自己相似優解を構成し、これらと比較することにより、解図形が許容多角形集合に属している限り、有限時間で面積が零の状態に縮退することはなく、また、その面積は有限であること、つまり有限時間で平面全体に拡大することはないことが分かった。また、解図形の時間局所的な挙動についても解析を進め、辺の消滅の仕方などが一般化されたモデルに対してもクリスタライン曲率流方程式のそれと同様であることが分かった。ただし、これまでの研究で、初期図形によっては界面相互の衝突があることが分かっている。前年度までの研究では、この界面相互の衝突を避けるため初期図形の各辺の曲率に対して強い条件を課していたが、本年度はこの条件を若干ではあるが緩和することが出来た。この場合、その条件下では有限時間に解図形は完全に凸化することが分かった。また、初期図形が連結ではあるか単連結ではない場合、つまり穴を持つ場合に対する解析も進め、穴の形状に関する条件も弱めることができた。これらの成果は現在投稿すべく準備中である。なお、数値実験による予測では、まだ初期図形に対する条件はかなり緩和できると推測されるが、これは今後の研究の課題としたい。
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