研究概要 |
流体力学極限の研究は, (巨視的な)流体の運動を, 流体を構成している(微視的な)粒子系の運動法則から理解しようとする試みです. 気体の運動を考えると粒子系の運動法則はNewtonの運動方程式に従う気体分子の超多体系で1つ1つの気体分子を見れば各々は他の気体粒子との相互作用により, ランダムに動いているように見えるでしょう. しかしながら, 時間-空間に対して「良い」スケール変換をしてみれば決定論的なダイナミクス(流体の方程式)に従って時間発展しているように見えます. このように超多体系から時間-空間に対して「良い」スケール変換をすることにより決定論的な方程式を導出することを総称して「流体力学極限」と呼びます. この「流体力学極限」の問題は物理的には流体の方程式が導出されていますが, 数学的に厳密に導出されているとは言いがたい状態です. 考える超多体系としてNewtonの運動方程式を考えるのが自然でありますが, 残念ながら現段階では困難でありますので, 本研究では流体の方程式が導出されるメカニズムを保持しつつ ; かつ数学的には厳密に「流体力学極限」をとることのできるモデルの一つである「格子気体モデル」を考えます. 特に本年度は「格子気体の流体力学極限」で大きな問題である「スペクトルギャップ」の研究また関連すると思われる「linear system」に関して研究をして以下の結果を得ました。 1. スペクトルギャップについて、Landim, Sethuraman, Varadhan達の条件を多少改良した. 2. スペクトルギャップの評価が悪くなる反例を発見, 構成した. 3. linear systemについて中心極限定理を得た.
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