1.今年度中に学術雑誌に投稿した内容。 一次元ランダムウォークの正の半直線への初到達時刻についての遥動理論(Sparre Andersen定理)を拡張・応用して、二次元ランダムウォークの半無限直線への初到達時刻・付看箇所を含む三変数の漸近評価は、本研究で既に得ていた。これを論文にまとめたものは、再投稿した。 この研究を拡張し、連続時間の類似した性質を持つ確率過程、すなわち二次元ブラウン運動でも、半直線への初到達時刻に関連する三変数の漸近評価を得た。手法はランダムウォークの場合とは全く異なるものであり、本研究が始まるよりまえの、研究代表者の研究結果を組み合わせて使うものであった。さらに、ランダムウォークの結果に出現した、公式集にも載っていない興味深い定積分が、ブラウン運動の場合でも出現したが、その出現に到る過程はまったく異なっていた。 2.投稿準備中の内容。 一次元ランダムウォークのうち、負の向きには大きな跳躍を持つが、正の向きには1ずつしか跳ばないものは、リスク理論の興味から、これまでに多くの研究がある。そこで得られている恒等式のひとつに、初めて出発点を下回るときの値の確率分布が、跳躍を特徴付けるレヴィ測度ではなく、レヴィ測度の裾野つまり積分を密度とするものであることが挙げられる。この食い違いに着目し、連続時間の場合に拡張を試みた。「片側の跳躍のみを持つレヴィ過程」として知られる分野の結果を応用して、類似の結果を得たが、もちろん手法はランダムウォークの場合とは全く異なるものである。さらに、当該恒等式の本質が、「exit system」として知られる、より一般のマルコフ過程について成り立つ原理であることにも気づき、研究結果をまとめるに際しては、この見地に立って作業中である。
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