研究概要 |
(1)本質的スペクトルを持つ線形化作用素の固有値非存在範囲の数値的検証法の改良を行い, 昨年度に比べ50倍大きな摂動項についても高速に検証可能となった (2)3次元 Photonic Crystalのバンド・ギャップの存在検証の定式化に取り組んだ。Photonic Crystalにおける電場と磁場の状態は周期関数を係数に伴う3次元全空間におけるMaxwell方程式で記述される。Photonic Crystalは, 誘電率の分布によってはある周波数を持つ電磁波を透過しない性質を持つことがあり, このような周波数帯はバンド・ギャップと呼ばれる。バンド・ギャップを確かに持つマテリアルをナノテクノロジーを用いてデザインすることは大変重要な問題であり, 数多くの有益な応用がある。本研究では, 与えられた誘電率に対してバンド・ギャップが存在することを, これまでに研究代表者らが開発してきた固有値非存在を保証する数値的検証法を拡張して適用することにより, 数学的に厳密に証明する手法を開発した。現時点で使用可能な計算機性能では良好な検証数値例を得ることができなかったが、誘電率の分布の工夫や計算アルゴリズムの更なる改良を目指して今後も研究を続けていきたい。 (3)非線形微分方程式系の周期境界値問題に対する数値的検証法を提案した。特に、作用素が非対称な場合の複素固有値の包み込みに成功した。固有値が多重あるいは非常に近接している場合には, 単純固有値の精度保証法は適用できない。本研究では, 固有関数が周期境界条件を満たす場合の多重複素固有値および複数の単純(実または複素)固有値を精度保証付きで求める手法を開発し, 良好な検証数値例を得た。
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