巡回セールスマン問題(TSP)はNP困難のクラスに属し、多項式時間で最短経路を求めるのは不可能と予想される代表例になっている。そこで、理論的な観点からはどのような性質があれば、TSPの最適解が多項式時間で得られるかについて研究を行ってきた。本研究では、TSPの一般化である車両配送問題(VRP)の多項式時間で解けるクラスについて取り組む。まず多項式時間で解けるクラスの視点からTSPとVRPの共通点、相違点を明確にし、その上で、理論的側面からは特に平面性など幾何学的性質を考慮した条件とグラフ理論との関連性の考察に取り組む。 まず、TSPの多項式時間で解けるクラスとして知られているMonge性、Strong Demidenko条件、Supnick条件、Kalmanson条件のいずれを仮定してもVRPが多項式時間で解けることがわかった。特に、Supnick条件、Kalmanson条件については最適解の構造をかなり特徴付けることができた。これらの最適解に含まれる構造はTSPで重要な概念であったpyramidal tourを自然に拡張した形であることを証明した。さらにpyramidal tourを拡張した形の中でコスト最小のものを見つける多項式時間アルゴリズムを考案した。これらの結果を合わせることにより、VRPの最適解が多項式時間で得られることが示される。これらの結果については3月にFloridaで開催された組合せ論に関する国際会議(38^<th> CGTC)で発表を行った。 また、TSPにおいてpyramidal tourの中に最適解があると保証される条件に対し、VRPではその性質が壊れてしまう、すなわちpyramidalという構造でない解のみが最適解になるようなことがおきるととても興味深い結果になると思われ、現在それに取り組んでいる。
|