巡回セールスマン問題(TSP)はNP困難のクラスに属し、多項式時間で最短経路を求めるのは不可能と予想される代表例になっている。そこで、理論的な観点からはどのような性質があれば、TSPの最適解が多項式時間で得られるかについて研究を行ってきた。本研究では、TSPおよびTSPの一般化である車両配送問題(VRP)の多項式時間で解けるクラスについて取り組む。まず多項式時間で解けるクラスの視点からTSPとVRPの共通点、相違点を明確にし、その上で、理論的側面からは特に平面性など幾何学的性質を考慮した条件とグラフ理論との関連性の考察に取り組む。 まず、平面上に凸状に配置された頂点集合のハミルトン閉路に対し、交差する2辺の交換を繰り返して、自己交差のない閉路を得るために必要な交換回数の上限と下限に関して得られた結果および制約つきのハミルトン閉路に対して必要な交換回数について得られた結果をKyotoCGGT2007において発表し、Lecture Notes in Computer Scienceへの掲載が決疋した。これはTSPの近似解法の1つである2-OPTに似た交換操作であるが、交換できる2辺を交差しているものに限定していること、および凸状配置であることから平面性に強く依存している。 VRPについては、閉路の個数や各閉路が通ることのできる頂点数に制約を入れた問題について継続して考えている。例えば、各閉路が通ることのできる頂点数が2ならば解は直ちに得られるが、3以下にするだけで状況がかなり複雑になることがわかっている。 また、このほかに、頂点集合の対するボロノイ図を指定した部分領域内に正確に描画する問題に関する結果、ダブルトーラス上の三角形分割のうちK_6マイナーを持つものの特徴付けに関する結果を得ることができた。
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