研究概要 |
巡回セールスマン問題(TSP)とは与えられた複数の都市をすべて1回ずつ通り、出発点に戻ってくるような最短経路を求める問題である。この問題はNP困難のクラスに属しており、都市数が増えたとき実用的な時間(多項式時間)で最短経路を求めるのは不可能と予想されている代表例の1つである。そこで、理論的な観点からはどのような性質をみたせば、TSPの最適解が多項式時間で得られるかについて研究されてきた。本研究では、このTSPの最適解が多項式時間で解ける条件をTSPの一般化である車両配送問題(VRP)に対し適用した場合について考える。 まず、van der Veen条件(1994)、Strong Demidenko条件(1979)を仮定するとVRPの最適解が多項式時間で解けることがわかった(ただし、閉路の数は定数とする)。これらの証明はTSPにおいて有用であったピラミッド型巡回路を拡張した構造の中に最適解があることを示すことが鍵である。また、EnomoIto, Oda, Otaの条件(1998)をVRPに仮定すると、幅1の逆送を許すピラミッド型巡回路を拡張した構造の中に最適解があることを示した。さらにvan der Veen条件以外のこれらの条件をVRPに仮定すると、各閉路の通る頂点のラベルがほぼすべて区間をなしているような最適解を持つことがわかった。このことにより、既知のものよりもさらに効率よく最適解を得るアルゴリズムを適用できることがわかった。さらに、Demidenko条件を仮定すると、最適解がピラミッド型巡回路を拡張した構造にはならない例を見つけることができた。このことにより、最適解の持つ構造がTSPとVRPで必ずしも同じではないことがわかった。しかし、このDemidenko条件をVRPに仮定した場合の挙動についてはまだよくわかっていないところが多く、これを解明することは今後の課題である。
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