研究概要 |
本研究では、辺の数が多い密なグラフの内部構造を把握するための次数条件、禁止部分グラフ、及び、グラフの連結度に関する研究を行う。 本研究の動機付けは、研究代表者が当該分野において未解決問題である、江川・太田による予想(k,tを2以上の整数とする.グラフGにおいて,位数(t+1)k+t^2-t以上,かつ,各点の次数がk+t-1以上と仮定する.このときGはk個の点素なK1,tを含む.)の解決を目指すことにあり、今年度では、上の予想について禁止部分のグラフに関する視点から研究に取り組んだ。 その結果、K1,r(r>2)を誘導部分グラフとして含まない。K1,r-フリーグラフと呼ばれるグラフの族に関して、江川・太田予想と同じ結論(すなわち、「Gはk個の点素なK1,tを含む.」)を得るための次数条件、及び、位数の条件について、それぞれ最良の値を決定するという問題に関して一定の研究成果をあげることが出来た。 具体的には、t=2のときとr=t=3の場合について、次数条件、及び、位数の条件において、それぞれ最良の値を決定することが出来た。このうち、t=2の場合に関する論文がHiroshima Mathematical Journalに採録が決定し、今年度出版された。 江川-太田予想の解決が難しい点は、グラフの辺の密度が極端に偏った部分構造がまだ十分に把握されていないことにあり、密なグラフの部分構造においてK1,r-フリーであるような状況がしばしば生じるので、K1,r-フリーグラフにおいて同種の問題を考察することは、密なグラフの部分構造把握の点で意義があると言える。また、この予想とは離れて、禁止部分グラフに関する分野の視点から見ても、上述の研究成果は新しい結果であり、今後関連分野への様々な応用が期待出来る。 また、密なグラフでは、連結度の高い部分構造が生じやすく、そうした部分グラフにおいて、縮約しても連結度が変わらないような辺が存在すると、縮約したその部分グラフに頂点数に関する帰納法が適用出来、所望の構造を見つけやすくなる。この観点から、研究代表者はそのような辺の存在を強いるための禁止部分グラフを決定することに関する研究も並列して行い、現在新しい研究成果を得つつある。このような連結度の研究は2年目の研究計画において特に力を入れて取り組む予定である。
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