幾つかの金融時系列データを多変量時系列とみなして、時系列間の構造を解析することは興味深く有用である。多変量時系列解析には様々な手法があるが、とくに有用なものとして、判別解析やクラスタリング、主成分分析や独立成分分析、因果性解析等が挙げられる。これらの手法をヘッジファンドのデータに応用することを試みている。金融危機により多くのヘッジファンドが消滅すると言われている。判別解析やクラスタリングにより、ヘッジファンドのデータを幾つかの消滅するグループと生き残るグループに分類することができれば、それら消滅または生き残ったヘッジファンドのグループの特徴を知ることができる。また、それぞれのグループ内で、主成分分析や独立成分分析を行えば、それぞれのグループが消滅または生き残った主な要因を知ることができる。さらに、消滅したグループ内やグループ間で因果性解析を行えば、ヘッジファンドが消滅していく連鎖の特徴を掴むことができる。通常時系列解析においては、多くの場合定常性を仮定する。しかしながら、金融危機を挟んだ長期間の金融時系列データにおいては、構造変化が起こっていると考える方が自然であり、定常性の条件はきつ過ぎる仮定となる。従って、時と共に構造変化が起こっているといつ条件を許す局所定常時系列モデルを用いて解析を行っている。しかしながら、ヘッジファンドのデータは月次データであり長期間でありながらも局所定常過程における正則条件を満たすだけのデータ数が存在しない。このデータ数の問題を解決することが今後の課題である
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