研究概要 |
本研究は、双曲型及び分散型の非線形偏微分方程式に対する零条件を確立し、種々の非線形波動現象の背後に潜む数学的構造を抽出することを目標としている。ここで言う零条件の確率とは、階の時間大域的挙動と非線形構造との間の関係を明らかにすることである。教義の非線形型波動方程式(線形部分がダランベルシアンの場合)に対する零条件は1980年代以降盛んに研究され、成熟した理論が確立されていると言えるが、例えばダランベルシアンに定数係数の低階項を加えただけにすぎないクライン・ゴルドン方程式に対してさえ、零条件はダランベルシアンの場合と著しく異なったものになることが知られており、より一般の非線形型双曲型方程式や非線形型分散型方程式に対する霊条件がどのようなものであるかは今なお十分に解明されているとは言い難い。本年度は非線形項に未知関数の微分を含む非線形シュレディンガー方程式およびそれらの連立系を対象として考察をすすめ、空間1次元で方程式がゲージ不変な場合について満足すべき結果が得られた。この成果は川原雄一郎しとの共著論文として日本学士院紀要A第82巻8号(2006年)に掲載されている。高次元化およびゲージ不変でない場合の考察は次年度以降の課題である。また、林仲夫氏、Pavel Naumkin氏との共同研究として、一般化された非線形シュレディンガー方程式における消散構造の特徴付けを考察した。そして、3月にアメリカのジョンズ・ホプキンス大学で行われた非線形分散型方程式に関する国際研究集会のおいてその研究成果を発表した。この結果は、最近アインシュタイン方程式に関連した非線形型双曲型方程式に対してLindblad-Rodnianski, Alinhac,片山-久保等によって考察されている弱零条件と大変密接に関連しており、当研究課題の今後の進展の糸口を与えるものと期待できる。
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