研究概要 |
本年度の研究実績は以下の通りである. 1. クーロンポテンシャルを持つ1次元シュレーディンガー方程式に対して定まるVoros係数のBorel変換についてexplicitな表式を導出した. その表式により, Voros係数の解析的な性質が詳しくわかり, それから(ある標準的な方法で正規化された)WKB解のBorel変換についての幾つかの性質(Borel総和可能性など)などを導いた. 2. 二階のシュレーディンガー方程式でポテンシャルが単純極及び単純な変わり点を持つものを考え, その極と変わり点が合流する過程でのWKB解のBorel変換の特異点の様子を, 特に「動かない特異点」におけるalien derivativeなどを詳しく調べた(数理解析研究所の河合隆裕氏, 竹井義次氏と東京大学の神本晋吾氏と共同研究であり, 現在投稿準備中). この結果には項目1で得られた成果が用いられている. この成果は(項目1と併わせて)本年度の交付申請書で述べた「大域的な性質の研究」に対する一つの結果である. 3. 単純極型作用素の分解定理, その一つの応用, また, 将来の研究のための準備(狭い意味での単純極型作用素の拡張となるLクラスやMクラスの導入とその意味合い)を論文としてまとめた(数理解析研究所プレプリントRIMS-1658, 数理解析研究所の河合隆裕氏と竹井義次氏との共同研究で近いうちに投稿する予定).
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