1.大域評価における非単調分散系: 時空大域評価が本質的なモデルケースとして、空間2次元で指数型非線形項を持つKlein-Gordon方程式を調べた。この方程式ではSobolev型不等式による運動エネルギーと非線形ポテンシャルの比較において、釣り合いの閾値が非線形の冪でなくエネルギー量に現れる所が3次元以上と異なる。 特にエネルギーが閾値の場合には、時間局所的な非線形項の摂動評価が一様定数では成り立たず、エネルギー密度の集約度に依存する。これも3次元以上の臨界指数の場合と異なり、集約状態で非線形がより強まる事を意味する。 この問題に対応するため、エネルギー集約度の時間変化に応じて適用する大域評価を変えるという手法を開発した。もっとも困難なのは集約度が単調に推移せず大きく振動を繰り返す場合だが、エネルギーの有限伝播性と、集約部分の分離によるエネルギー逓減法とを組み合わせて制御する事に成功した。 2.特異極限と分散性評価: 非線形性と分散性のバランス変化における分散性評価の役割を探求するため、Klein-Gordon-Zakharov方程式系の特異極限問題を更に詳しく調べた。特にプラズマ高周波極限におけるZakharov系への移行について、エネルギー有限解の収束を示した。これは以前得ていた亜音速極限の場合と異なり完全に摂動論なので、方程式の変形にもある程度対応できると期待されている。 この問題ではプラズマ周波数より高い周波体の電子場が低周波イオン場と相互作用する際、通常のStrichartz時空評価ではパラメーター様が処理できない。これはMaxwell-Direc方程式系でも同様な問題があったが、今回は分散性の双線形近似において共鳴する周波帯が非常に狭い事を用いてStrichartz評価を改善し、非共鳴成分の双線形評価と組み合わせて処理する事に成功した。
|