研究概要 |
非線形分散型方程式とは,方程式の分散性と非線形性とが相互利用する波動現象を記述する方程式であり,その解の性質を偏微分方程式論の立場から数学的に解析して理解することが研究の目的である.本年度は,非線形シュレディンガー方程式に対する解の大域的性質を先験的評価式により研究した.先験的評価式は解の大域存在,大域挙動に関する性質を示唆し,それを証明することは非線形偏微分方程式の非線形相互を理解することにおいて重要な研究である. 今年度は昨年度に引き続き,空間次元2次元の非線形シュレディンガー方程式に対して,非線形項の相互作用により生じる特異性の時間大域的解析を行った.特異性をフーリエ波数空間で考察すると波数間でエネルギーのやり取りを行う移送過程が見て取れる.今回はその移送状況として,低周波帯から高周波帯にエネルギーされる解を構成することに成功した.これまでの研究から,エネルギーの移送過程を時間大域的に制御する評価式を得ており時間大域解の存在を得ているが,波数間におけるエネルギーのやり取りの詳細は分かっていなかった.ここでは,非線形性による波の波数間共鳴状態は2次元以上では波数ベクトルの直交性で記述されることを使って,その条件下で実際に波のエネルギーが低周波帯から高周波帯に転換される大域的評価式を証明した.結果は論文「Weak turbulence for 2D periodic cubic defocusing NLS」として主筆中である.
|