研究概要 |
本研究では, 不動点定理・不動点理論に関する非線形関数解析学の基礎理論を体系的に構成し, それをもとに, 不動点近似への帰着によって非線形問題の解をもとめる研究を行ってきた. 不動点理論・不動点近似の立場から非線形最適化問題, 制約可能性問題, 経済均衡問題等の非線形問題を再構成し, 非線形問題の解への収束問題を不動点近似に帰着するように研究してきた. 20年度の主な結果は以下のものである. Hybirid法による収束定理については, 擬射影を用いることにより, Banach空間における擬非拡大写像に対しての定理が既に得られていたが, 本研究では距離射影を用いたhybrid法により, Banach空間における非拡大写像族に対して強収束定理を示した. また, まずHilbert空間において研究したが,非拡大写像族に対して, 距離射影を用いたhybrid法による点列について研究し, 不動点集合が空でないという仮定なしでwell-definedであることを示した. さらに, 共通不動点集合が空でないための必要十分条件を確立した. 一方, 任意有限個および加算個の擬非拡大写像に対して弱収束定理および強収束定理をBanach空間で示した. これらの結果は, 非線形問題の解を見つける問題への応用の足掛かりを担っているといえる. 特にBanach空間における距離射影を用いたHybrid法による写像族の共通不動点近似に関するものは, 制約可能性問題, 均衡問題, 最適化問題などの非線形問題の解への収束定理に直接結びつき, 写像族の共通不動点近似の中で一定の大きな役割を担っているといえる. また, これらの成果が国内外の雑誌で公表されたし, 内外の研究集会で発表して大変関心を持たれた. これらは, 本研究が成果をあげられたことを裏付け, 今後の発展的な研究に結びつくことも裏づけているといえる.
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