研究概要 |
本研究では,流体力学に現れる非線形偏微分方程式の定常解に関する研究を行うことを目的としている.平成18年度は,Aperture domainという領域でのNavier-Stokes方程式の小さい初期値に対する一意強解の時間大域的存在性について研究を行った.Aperture domainはその形状から2つの半空間の間の流出流入条件,または無限遠での圧力降下条件を課さなければ,Navier-Stokes方程式の線形化方程式であるStokes方程式でさえ一意性を示すことが出来ないことがあるということが知られている.本研究では流動条件を与えた場合におけるNavier-Stokes方程式の小さい初期値に対する一意強解の時間大域的存在性について考察した. 今年度は,流動がない場合におけるNavier-Stokes方程式の小さい初期値に対する強解の時間大域的存在について示した.また,流動がある場合についてはHeywoodの補助関数を用いることで流動がない場合に帰着することができ,流動がない場合と同様にして時間局所解の存在を示すことができた.しかし,時間大域解についてはHeywoodの補助関数の性質の悪さから,流動がない場合と同様に示すことは難しく,現在検討中である.ただし,流動が時間変数に関して単調減少関数であるときには小さい初期値に対する時間大域解の一意存在と時間無限遠での解の漸近挙動を得ることができた.流動が小さい定数である場合などにおいても,Heywoodの補助関数の性質の悪さから同様に示すことは難しく,これも現在検討中である.
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