研究概要 |
超選択則とはヒルベルト空間の射線で実現可能な物理状態をきめる量子論の基本原理である.平成18年度はフエルミオン系で本質的なユニバレンス超選択則を取り上げた.これは実験事実であるが,量子論の基礎的な問題として古くから認識されている. 代数的にはJordan-Klein変換により同型であるパウリ代数とフェルミオン代数が無限次元では異なる統計力学的性質を持つことを得た.前者のパウリグレーディングを破る例としてはXYモデルなどが得られている.ここでの結果はこれと相補的であり,フェルミオングレーディングはいかなるモデルでも本質的な自発的対称性の破れが存在しないことを主張する.「本質的」というのは局所系に対する条件として定式さえていることを指し、病的な例が排除される。証明にはこれまで研究してきたフェルミオン系での状態を拡張性,状態相関に関する成果を使った. さらに格子系では平行移動不変性の仮定無しで、Araki-Sewell型局所変分原理がフェイルミオングレーディングを必ず保つことを要求することを証明した. 他には量子的マルコフ性を研究した.系が捩れたグレーディングがある場合で「マルコフ性」「条件付期待値の可逆性」「エントロピー強加法性」の同値性を得た.フェルミオン代数とパウリ代数を比較すると,Jordan-Wigner変換でマルコフ状態の空間は一対一に対応するが,フェルミオンマルコフ状態にはテンソル糸にはない非局所的な特質があること示した.
|