研究概要 |
反応拡散系は自然界におけるパターン形成の数理モデルである. 固有値の変分的特徴付けにより, 活性因子・抑制因子型反応拡散系の一般的な内部遷移層のスペクトルに関する結果を得た. 内部遷移層の極限であるシャープインターフェースが円や直線のような対称性をもっていることを仮定せず, Oに近づく臨界固有値のオーダーと対応する固有関数の特徴付けに成功した. これにより, 特異極限問題の解の存在と非退化性を仮定したとき, 内部遷移層のまわりで線形化した作用素がO固有値をもたないことがわかる. したがって, 近似解のまわりに真の解を構成することができ, さらにその安定性が極限問題に帰着されることも対称性なしで厳密に示した. 活性因子・抑制因子型の2種の反応拡散系において, 抑制因子の拡散係数が非常に大きい極限では, シャドーシステムと呼ばれる方程式に帰着される. さらに, 定常問題の場合は単独非線形楕円型偏微分方程式になる. この非線形楕円型方程式は, 非線形シュレディンガー方程式の定常波に関する方程式においても現れ,盛んに研究されてきた. 空間非一様な環境下では, 変数係数の非線形楕円型方程式になる, この係数が, 球対称な関数になる場合に, 変分的手法を用いて, 解の非退化性に関する結果を得た. これは, 複数の点に集中している多重バンプ解を構成する上で基礎となる重要な性質である. さらに, 変分的手法とリャプノフ・シュミットの縮約法を同時に使うハイブリッドな手法で, 多重バンプ解を構成することに成功した.
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