研究概要 |
離散パンルヴェ方程式とは, ある種の「可積分な」2階非線形常差分方程式の総称であるが, 最近の研究によりパンルヴェ微分方程式を含むより基本的な力学系であることが認識され, さまざまな観点から近年活発に研究されている. とりわけ, 特殊解およびそのタウ函数の構成については, 最近の研究により急速に進展しつつある. こうした状況を踏まえ, 今年度は, 離散パンルヴェ系の特殊解, とりわけそのタウ函数を完全に決定する課題に集中的に取り組んだ. 結果の概要は以下の通りである. ・E_7^<(1)>型q-パンルヴェ系の超幾何型特殊函数解のタウ函数を完全に決定した. カゾラチ行列式表示において, その要素はq-超幾何函数8W7で与えられる. また, q-超幾何函数_8W_7の変換公式やいわゆる「12個の解」についても, 元のパンルヴェ系のワイル群対称性から説明される. この結果は, 学術論文として発表されている. ・E_8^<(1)>型q-パンルヴェ系の超幾何型特殊函数解のタウ函数を完全に決定した. カゾラチ行列式表示において, その要素はRahmanのq-超幾何積分で与えられる. また, q^-超幾何積分のBailey変換やいわゆる「56個の解」についても, 元のパンルヴェ系のワイル群対称性から説明される. この結果は, 学術論文として投稿中である. これらの他, E_7^(1)型q^-パンルヴェ系のある種の代数解のタウ函数の構成などに取り組み, 論文発表には至っていないものの, 興味深い結果を得つつある.
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