楕円変形W代数の最も基本的な場合である楕円変形ビラソロ代数の可換保存則(Integrals of Motion)について考察する。1つはKdV方程式の可換保存則の楕円量子化にあたるLocal Integrals of Motionであるが、この具体形は昨年得られていたのであるが、証明にいくらかのギャップがあることが分かったので、その部分を完成させた。もう1つはSine-Gordonの楕円量子化にあたるNonlocal Integrals of Motionであるが、これがSine-Gordonの変形物であることは今年ようやく気がついた。Local Integrals of MotionとNonlocal Integrals of Motionの交換関係の証明で完全でない部分があったのでこれを完成させた。さらにパラメータs=2への特殊な退化極限(ナイーブには発散している)を収束させるくりこみの仕方を考察し、s=2におけるIntegrals of Motionの式予想を与えた。これらの結果を論文「The Integrals of Motion for the Deformed Virasoro Algebra」にまとめた。ついで楕円変形ビラソロ代数を高階に一般化した楕円変形W代数、Wqt(sl(N)^)の場合にIntegrals of Motionを考察した。KP方程式の楕円量子化にあたるLocal Integrals of Motionの冪級数による表示を得た。またAffine-Todaの楕円量子化にあたるNonlocal Integrals of Motionの積分表示を構成した。これらの表示の性質についてある程度の部分まで証明を与えた。これらの結果の式をいくらかの予想と共にまとめ、論文「The Integrals of Motion for the Deformed W-Algebra」として表現論シンポジウム2006のProceedingsとして発表した。Local Integrals of Motionについてはもっと良い積分表示があるので、それらについての細かい証明を現在行っており、完成したら完全な証明つきの論文としてどこかの雑誌に発表したい。このWqt(sl(N)^)の結果に関しては、より簡単な共形場理論の場合においてすらIntegrals of Motionの論文はない。(sl(3)^のみの論文ならある。)状態で、より一般の場合を先に解いたことになります。ついでルート系D_4^(1)に対応する楕円変形W代数Wqt(D_4^(1))の場合にNonlocal Integrals of Motionを考察した。これはD_4^(1)型のAffine-Todaの可換保存則の楕円量子化にあたる。スクリーニング・カレントのAffine化を決め、これを用いてNonlocal Integrals of Motionの積分表示の具体的な予想式を構成した。現在この予想で正しいのか考察中。このD型の結果については、参考となるデータ関数の等式についてかかれた論文すらなく、もちろん共形場理論の論文もない状態ですので、この予想が正しければ、本質的に新しい結果といえますが、なにぶん類似の論文が存在していないので、状況は混沌としています。式予想を作る際に用いたある種の「考え方」があるのですが、これが正しいとなるとSimply-Lacedのルート系の場合のNonlocal Integrals of Motionは直ちに全て解決されることが期待されます。
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