研究課題
相転移現象を記述する非線形偏微分方程式の可解性は、発展方程式をはじめこれまで様々なアプローチによって解の存在が証明されてきた。特に温度を1つの未知変数と見なしたときに移流の影響も考慮したモデルでは、移流項は拡散項に比べ低次の微分の項であるため、移流が十分滑らかであれば解の存在を証明することは既存の理論の範疇で扱える。しかしながら、移流の滑らかさが十分でない場合や移流自身が別の方程式の解として定義される場合には解の存在を証明することは自明ではない。本研究によって、フェイズフィールド方程式と呼ばれる方程式系やある種の非線形拡散を主要項に持つ熱方程式と、ナヴィエ・ストークス方程式と呼ばれる方程式系の連立系に対してもある種の条件下で弱解の存在が証明できることが分かった。フィックスやカジナルプらが提唱した古典的なフェイズフィールド方程式では移流項に対して時間の滑らかさを近似すれば既存の抽象理論の枠組みで可解性が証明できること、2次元の場合には移流項がナヴィエ・ストークス方程式の弱解のクラスで与えられたとしても解が本質的に有界なクラスに入ることを利用して弱解の存在が証明できることが分かった。またノイマン境界条件下でペンローズ・ファイフ型のフェイズフィールド方程式に現れる非線形拡散を主要項に持つ熱方程式とナヴィエ・ストークス方程式の連立系に対して弱解が存在するための必要十分条件が得られた。2次元の場合には、固体液体相転移モデルにおいて未知関数によって定義される液体領域内のみでナヴィエ・ストークス方程式を考慮するモデル、すなわち自由境界値問題に対しても既存の抽象理論を応用して弱解の存在が証明できることが分かった。
すべて 2006
すべて 雑誌論文 (4件) 図書 (1件)
Free Boundary Problems : Theory and Applications Internat.Ser.Numer.Math. 154
ページ: 169-178
Mathematical Modeling and analysis for nonlinear phenomena, RIMS Kokyuroku 1522
ページ: 82-100
Mathematical Models of Phenomena and Evolution Equations, RIMS Kokyuroku 1475
ページ: 45-64
Bull.Gifu National College of Technology 42
ページ: 15-24