研究概要 |
冪の非線形性を持つ半線形波動方程式の初期値問題は初期値の性質を変えて様々な研究をされてきている。特に初期値関数の台がコンパクトである場合と非コンパクトであり遠方で多項式減衰している場合については解の存在・非存在を分ける条件がそれぞれ特徴的であった。このことは対応する方程式系においても同様であることが知られている。本研究の目的は,ひとつの系の各成分に,初期値関数として性質が異なる関数を与えて解析し,系の相互作用と初期データの関係が解にどのように影響するか調べることであった。 初年度は各初期値関数の性質が少しだけ異なるケースとして,strongly coupled systemに対して異なる減衰オーダーを持つ初期データを与えて解の非存在について解析した。その結果,この系の解の爆発には初期データの減衰オーダーと方程式系の相互作用との複雑な関係が影響していることを確認した。この結果の最適性はテクニカルな問題のためにまだ得られていないが引き続いて調べていく。 本研究に関連して,系の各成分の初期データの大きさが異なるケースを解析している高村博之氏(公立はこだて未来大学)との情報交換や打ち合わせを行った。初期値関数のそれぞれの仮定が異なるケースを扱っている研究は他に見られないので非常に有意義であった。 今年度は準備や調査に留まり,大きな結果は得られていないが,仮定の異なる初期データと非線形性との関係を調べるという点では意義深かった。次年度はこれを基にして,より複雑なケースの解析も進めていく。
|