本研究では、原始太陽系星雲中で形成領域が異なると考えられているオールト雲彗星と木星族彗星という2グループの彗星において、その塵の性質の違いを明らかにすることにより、「原始太陽系星雲中での始原的物質の循環・微惑星形成」を探ることを目的としている。昨年度に引き続き、特に彗星塵中の「ケイ酸塩の結晶質/非晶質比」という指標に着目して研究を進めた。 今年度は、特に木星族彗星の観測と塵熱放射モデルによる解析を進め、昨年度に中間赤外線帯で分光観測した2つの木星族彗星(73P/Schwassmann-Wachmannと4P/Faye)の解析をおこない、特に73P/SW彗星が高い割合の結晶質ケイ酸塩を持ち、オールト雲彗星に比較的近い値を示していることを明らかにした。また、8P/Tuttle彗星及び10月に突如増光した17P/Holmes彗星の2彗星の中間赤外線分光観測もおこなった。それにより原始太陽系星雲では効率的なダスト循環が起こっていたか、あるいは彗星核の形成領域についての見直しをおこなう必要があることが示唆される結果を得た。 本研究により、結晶質ケイ酸塩に着目して観測的研究をおこなうことには重要な意義があることが分かってきた。これにより、今後も観測を続けオールト雲彗星と木星族彗星での塵の性質の違いを統計的に見ることで、原始太陽系星雲中での塵の進化状況について探る足がかりを得た。
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