本研究は、これまでほとんど明らかになっていない狭輝線セイファート1型銀河中心核のジェット現象について、世界で初めての系統的なVLBI撮像観測により、その性質を明らかにしようとするものである。狭輝線セイファート1形銀河は、活動銀河核のサブクラスの1つであり、急激に成長しているブラックホールに関連する知見を持っている可能性が高い天体であり、大変興味深い。電波で大変暗い天体であり、観測の技術的な面で難しい観測になる。私は、新しく構築された大学連携VLBI観測網に、位相補償観測モードを追加することで解決を図り、この研究に挑んだ。 本報告では、平成18年度(研究計画1年目)の研究実績について述べる。設定していた研究計画とは、 (1)大学連携VLBIを用いて、必要な観測データをすべて取得し、解析をおこなう。 (2)以前米国のVLBAでおこなっていた観測の成果論文を発表する。 (3)ポーランドでのEVNシンポジウム、中国での東アジアVLBI研究会、および日本天文学会春季年会で、途中成果を順次発表してゆく。 の3つであった。この1年間で実際に達成できた事項は、 (1')予定通り、観測データをすべて取得することに成功。さらに、解析も終了、その成果は学術論文として受理され、予定を上回る進捗となった。これは、大学連携VLBI観測網から生まれた初めての科学的成果となった。 (2')予定通り、VLBAの観測から得られた結果は、学術論文として受理され、出版された。 (3')予定通り、ポーランドのシンポジウムでポスター発表、中国の研究会で口頭発表した。天文学会では、予定通り春季年会でポスター発表しただけでなく、秋期年会でも口頭発表をおこなった。 このように、すべての項目において、予定通りまたは予定を上回る成果をあげることができた。さらに当初計画にあげていなかった項目として、 (4')本研究の観測に必要となり新たに開発した観測技術に関する学術論文を出版した。 2年間の研究計画の中で、観測データをすべて取得し順次成果発表をしてゆくという1年目の計画は、順調に実行され、完全に達成されたと考えている。
|