我々は過去の研究からCrab Nebulaの形態が時間変動することを明らかにしてきた。本年度はさらに、チャンドラX線天文衛星を用いたCrab Nebulaの過去最長の長期観測から、その時間変動成分の特性を明確に示すことができた。まず、日から週単位の短期変動成分に関しては、「ウィスプ」と呼ばれる紐状の構造が衝撃波から外側にむかって伝播していくことが既に知られていたが、これが徐々に減速していくことを初めて明らかにした。また、年単位の長期時間変動成分に関しては、トーラスが部分的に膨張と収縮を繰り返していることを明らかにした。これらの物理的原因を今後検討していく。 これらX線観測に加えて、近赤外での観測を同時におこなった。近赤外の観測ではパルサー極近傍の「ノット」と呼ばれる成分が時間共に激しく変動している様子を初めてあきらかにした。このノットの成因はパルサー星雲におけるジェット形成に深く関与していると考えられており、激しい時間変動は高緯度パルサー風の衝撃波を見ている可能性もある。 また、X線天文衛星「すざく」でVelaパルサー星雲を観測し、硬X線での空間的な広がりを初めて明らかにした。軟X線とはまったく異なる形態は、硬X線放射の期限がパルサー星雲であることを示している。さらに、他の2つの超新星残骸を観測し、いずれの天体からも新にパルサー候補を発見した。
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