すざく衛星は平成17年の夏に打ち上げられた。搭載されているCCD検出器は酸素の輝線が存在する軟X線領域のエネルギー分解能に優れており、さらにバックグラウンドがXMM-Newtonに比べずっと低い。その結果、近傍の銀河団であれば、広い範囲の酸素の質量を知ることが可能になる。我々はすざく衛星を用いて、近傍の銀河団の酸素の質量を求め、銀河の光度との比から、II型超新星の重元素合成と過去の星形成について研究した。平成19年度はすざく衛星で観測された数個ほどの銀河団、銀河群のデータを解析し、比較することにより、銀河団ガスの重元素の起源や、銀河団内外の分布について、系統的に調べることができた。II型超新星とIa型超新星の寄与をそれぞれ求め、銀河団の酸素、珪素、鉄の質量と、早期型銀河の星の組成とIa型超新星爆発率を調べた。小さなスケールから大きなスケールまでの、重元素の時間変化も調べる予定た。さらに、重元素の量とその供給元である、銀河の星の近赤外線での明るさとの比を調べたところ、銀河団ごとの違いはあまりみられなかった。近赤外線の明るさとは現在の銀河の主要な構成要素である小質量星の全質量を反映する。つまり、かつてII型超新星爆発を起こした大質量星と現在も生きている小質量星の数の比、つまり銀河団での星形成の歴史がさまざまな銀河団ではほぼ同一であったことを意味する。
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