我々は10個の銀河団、銀河群の高温ガスに含まれる酸素の量を、2005年に打ち上げられた日本のX線衛星すざくを用いて調べた。水素、ヘリウム以外の元素の半分は酸素である。よって宇宙の化学進化とはほぼ酸素の合成史とにえる。酸素は大質量星の死である超新星爆発によって大量に合成され、宇宙空間にばらまかれる。さらに、銀河の外の空間にまで酸素がばらまかれていることが、我々の観測によってわかってきた。 その結果、銀河団の力学的半径の一割より内側の銀河団の中心領域では、大質量星と白色矮星による重元素でともに汚染されていること、その外側では、大質量星の超新星の寄与が増えている気配があることがわかってきた。銀河団形成前に大量の星が形成され大質量星の重元素爆発が起こり、銀河のバリオンを重元素で汚染し、銀河団形成後に、寿命の長い白色矮星の超新星爆発が作った重元素を銀河間空間に放出したと考えることができる。 銀河群では銀河団に比べ、銀河の明るさあたりに銀河団ガスに残っている重元素の量が、一桁も小さいことも明らかになってきた。銀河の種族にあまり差はなく、星形成歴史に大きな差があったとは考えにくい。銀河群では、重力ポテンシャルが浅いため、銀河形成時の銀河問空間へのエネルギー放出の影響が大きく、銀河は中心部により集中し、高温ガスは外側に広がっていることが示唆されている。重元素の分布は、エネルギー放出と重元素合成め時間スケールを反映する。重元素が合成されたあとに、エネルギー放出が起こったと考えると、重元素と高温ガスのエネルギー史をともに説明することができる。
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