KamLAND実験では、原子炉ニュートリノ、地球ニュートリノの研究に加え、さらに低エネルギー領域にある太陽ニュートリノ観測を目指している。太陽内部の核融合反応では、ppチェーンとよばれる一連の反応と、炭素・窒素・酸素の原子核が触媒的に作用するCNOサイクルとよばれる一連の反応が関係する。これまでの太陽ニュートリノ実験では、主たる反応であるppチェーンから作られたニュートリノの測定を行っている。本研究では、太陽の進化に関わる重要な反応でありながらこれまでに観測されていないCNOサイクルで作られるニュートリノを測定する。 そのためには、低エネルギー領域において必要なバックグラウンドレベルを達成するため、液体シンチレータ中の放射性不純物を除去することが課題である。CNOニュートリノ観測においては、現在約50mBq/m^3崩壊率となっている^<210>Pbを3桁以上削減する必要がある。液体シンチレータの純化には蒸留法を用いるが、小規模実験装置においてPbを約4桁の削減できることが確認されている。また、蒸留中に^<210>Pbの親核種である^<222>Rnの混入を防ぐ必要があり、液体シンチレータ純化後直ちにRn濃度をモニターする装置の開発は重要である。液体シンチレータ中において^<222>Rn娘核種である^<214>Bi/Poの連続崩壊の観測は、直接的で簡単であるが、検出器は統計量を増やすためにある程度の体積を必要とする。一方、集光率は低エネルギーイベントを作るPoの崩壊が測定できるレベルでなければならない。そこで、反射材の材料の選定、性能評価、製作を行ない、実際に高い集光率が得られ、Rn検出が可能となることを確認した。このデザインを基に高感度ラドン検出器(miniLAND)を製作し、実機の蒸留装置による純化後の液体シンチレータ中のRn濃度測定によって、CNOニュートリノ観測のための要求を満たしていることを確認した。 放射性不純物以外のバックグラウンドとしては、ミューオンの原子核破砕によって作られる短寿命の原子核の崩壊である。特に、^<11>Cは寿命29.4分と長く、生成率も大きいため、最大のバックグラウンドとなる。そこで、ミューオン、中性子、^<11>Cによる3重同時計測を用いて、^<11>Cの解析的な除去を行う。この反応における中性子生成をより深く理解するため、KamLANDにおける中性子イベントの選定とシミュレーションによる検出効率の評価を行なった。これにより、中性子生成率を10%程度の精度で見積もることが可能となった。
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