KamLAND実験では、これまでの原子炉・地球反ニュートリノ観測に加え、さらに低エネルギーの太陽ニュートリノ観測を目指している。太陽内部の核融合反応では、ppチェーンとよばれる一連の反応と、炭素・窒素・酸素の原子核が触媒的に作用するCNOサイクルとよばれる一連の反応が関係する。本研究では、これまでに観測されていないCNOサイクルで作られるニュートリノを高精度で測定し、太陽モデルにおける重元素量の検証を目標とする。 CNO太陽ニュートリノの観測を行うためには、現在約40mBq/m^3の崩壊率で最大のバックグラウンド源となっている^<210>Pbを3桁以上削減する必要がある。液体シンチレータの純化には蒸留法を用いるが、小規模実験装置においてPbを約4桁の削減できることが確認されている。平成18年度は、前年度において建設された蒸留装置を用いてKamLAND検出器の液体シンチレータの純化を行った。しかし、一回の循環で^<210>Pbに対して約1/4程度の除去率しか得られていないことが分かった。予測よりも悪い除去率となった原因として、循環の途中で純化後と純化前の液体シンチレータが検出器内で混合してしまったことが挙げられる。しかし、混合が起きる前の除去率も2桁程度であったことから蒸留装置自体にも問題があると考えられる。そこで、^<210>Pbに対する除去性能を高めるために、蒸留装置自体の改造を計画した。この改造により、小規模実験装置と同様の蒸留のコントロールが可能となり、目標の削減レベルが得られることが期待できる。また、循環中の液体シンチレータの混合を防ぐための温度コントロールのための熱交換器を導入した。今後は、再純化を行い改造後の蒸留装置の性能評価を行うとともに、^<210>Pbの削減後に最大のバックグラウンドとなる宇宙線起源の^<11>Cの解析的な除去効率を確認する。
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