我々の時空がなぜ4次元で宇宙はどのように始まったのか、といった根源的な間に答えるためには、重力を含んだ4つの力全てを統一した理論を構築する必要があり、その最有力候補とされているのが超弦理論である。超弦理論の非摂動論的定式化の試みとして提唱されたIIB型と言われる行列模型は、10次元時空で定式化されており、時空が行列で表わされることから非可換幾何をなす。標準模型を行列模型から導出するためには、余分の6次元空間を非自明なインデックスを持たせながらコンパクト化しなければならない。これは有限非可換幾何で非自明なインデックスを構成しなければならないことを意味する。この問題には格子理論で開発されたGinsparg-Wilson関係式を適用する手法が有効であり、GW関係式を満たすDirac演算子を用いれば、行列模型においても、カイラル対称性やインデックスを有限カットオフで定式化できる. また、格子理論では、ゲージ場の揺らぎを抑えるadmissibility条件を課すとゲージ場の配位空間に位相的構造が実現される。この条件が行列模型においても有効であるという予想に基づき、非可換トーラス上におけるadmissibility条件の解析を試みたが、数値計算に非常に時間がかかるため有効性を検証することが困難であることがわかった。そのため、別のアプローチを現在も模索しているところである。一方、格子カイラルゲージ理論の定式化は行列模型におけるカイラルゲージ理論の定式化と深く関連している。そこで、格子カイラルゲージ理論の構成に向けて私が以前に定式化したvortex fermionの再検討に取り組んだ。これは4+2次元空間で記述されているのであるが、ゼロモード解は余分の2次元空間には依存せずvortex核の所に一つしか存在しないという結果を得た。
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