本年度は申請者がこれまでに開発を進めてきた『一般化二中心クラスター模型』を^<12>Be=α+α+4N系へ適用した。まず、この系のJ^π=0^+状態の計算を行い、低励起状態の分析を行った。理論計算は、基底状態と低い励起0^+のエネルギー差の再現に成功し、それぞれ2hw励起配位、閉核配位に対応していることが明らかになった。このことは、最近実験的観測により示唆されている、N=8の魔法数の破れを矛盾無く説明するものである。次にこの系について変分的散乱計算法を適用し、α+^8Heの敷居値より上に発現する共鳴状態の内部構造に関する分析を行った。その結果、敷居値より上5MeVという非常に狭いエネルギー領域に、イオン的配意を持つα+^8He、^5He+^7He、原子的配位を持つ^6He+^6He、またσ軌道構造を持つ超変形状態といった3種類の構造が共存することが明らかになった。励起状態に発現する構造転移は、安定核においても議論されてきたが、構造転移には約10〜20MeVという非常に大きなエネルギーが必要であった。しかしながら、この結果は、中性子過剰系では少ないエネルギーの変化により構造転移が容易に起こることを示している。これは、中性子過剰核が弱結合系であるために起こる特徴的な現象であり、中性子ドリップライン近傍の原子核に系統的に発現する性質であると予想できる。 更に、この計算を有限スピンに拡張した結果、2hw配位を持つ基底回転帯はJ^π=8^+まで回転帯構造を保ち、基底状態のN=8の魔法数の破れを説明することが明らかになった。敷居値より上に発現する種々の状態についても回転帯が形成され、それらが共存することが明らかになった。この共存現象は、最近の実験データの振る舞いを定性的に説明することに成功している。
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