格子上で非摂動論的に繰り込みを遂行することができる、シュレーディンガー汎関数形式について研究を行いました。 格子上では有限格子間隔と有限体積の制限から、繰り込みスケールの取り得る範囲には制限がありました。このため非摂動論的な効果が重要となる低エネルギー領域から、摂動論的な高エネルギー領域までを一度に扱うことはできませんでした。シュレーディンガー汎関数形式はstep scaling functionの手法を用いることで、広い範囲のエネルギースケールを取り扱うことを可能にしてくれます。 本年度はこのシュレーディンガー汎関数の手法を用いて、Nf=2+1 flavor QCDの結合定数の導出を行いました。通常、QCDの結合定数は高エネルギー領域での散乱実験などをインプットにしてから求められるのですが、この研究ではPACS-CS collaborationによって導出された低エネルギーでのハドロン質量をインプットに用いました。さらに、高エネルギー実験との比較を行うために、シュレーディンガー汎関数形式の特性を生かして、高エネルギー領域へのrunningを非摂動論的に行いました。 これは低エネルギーがら高エネルギーまでの全スケールを7つに分割し、各点でのstep scaling functionを3種類の格子サイズについて計算し、連続極限を求めることによって可能となりました。 これはNf=2+1flavour QCDに関しては世界初の成果であります。 そしてこの結果、結合定数としてαs(Mz)=0.11758(89)という値を得ることができました。これは現在の世界最高水準の精度を実現しています。
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