研究概要 |
IceCube実験は南極氷河中に4,800本もの光電子増培管(PMT)を埋め、高エネルギーニュートリノからの信号を捕らえる非常にユニークな国際実験である。 本研究課題の具体的な目的はこのIceCubeで用いる10インチPMT並びに、それを氷中に埋めるために電源、電子回路と共に耐圧ガラスに収容したデジタル光モジュール(DOM)の絶対較正である。 平成18年度はこの絶対較正用システムの構築を行った。当初の予定ではキセノンランプからの光をモノクロメータで分光し、高速のチョッパで単色のパルス光を得る予定であった。しかしながら、その後、業者と綿密な打ち合わせを行った結果、(1)高速のチョッパを得るのが難しい、(2)分光する事で光量が落ちる等の問題が見つかった。よって、代わりに光源として365,470,520,572nmの4色の異なるLEDを用いる事にした。また当初は絶対較正されたフォトダイオードとアンプを組み合わせる予定であったが、アンプからの出力が十分でないことが分かったので、代わりに絶対較正されたPMTを用いることにした。 上記のように問題を克服した後に、各LEDの波長に於けるNDフィルターの反射率、透過率、また絶対較正されたPMTのゲイン等を較正し、絶対較正用システムを完成させた。 この絶対較正用システムを用いて、PMTの絶対感度を測定した。測定誤差は系統誤差を含めて5%程度である。この結果は浜松ホトニクス社が出した結果と誤差の範囲で一致していて、絶対構成システムが正常に動作している事を示す。 このシステムにより南極に埋められる8個のDOMについて、常温、低温の各4波長において、絶対感度を測定し、南極に送り出した。 またこの測定とIceCube実験で用いられている検出器シミュレーションの比較も進められている。
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