研究概要 |
IceCube実験は南極氷河中に4,800本もの光電子増培管(PMT)を埋め、高エネルギーニュートリノからの信号を捕らえる非常にユニークな国際実験である。 本研究課題の具体的な目的はこのIceCubeで用いる10インチPMT並びに、それを氷中に埋めるために電源、電子回路と共に耐圧ガラスに収容したデジタル光モジュール(DOM)の絶対較正である。 平成19年度は昨年度完成した絶対較正システムを用いて3本のDOMを絶対較正し、南極に送り出した。これらのDOMは無事に氷中へと埋められ、現在稼働中である。また来シーズン用のPMT8本を絶対較正した。これらのPMTはアメリカでDOMへと組み立てられ、平成20年度再び千葉大学で絶対較正した後、南極へと送られる予定である。 平成18年度に測定されたPMTとDOMのデータを用いて、PMTとDOMの間にある耐圧ガラス、緩衝用のゲルによる光の伝搬の影響が調べられた。現在はこのガラスとゲルの影響はGeant4シミュレーションによる結果が用いられている。このシミュレーション結果を用いると中心付近の絶対感度は良く合うが、DOMの端では合わず、現シミュレーションがDOMの感度を系統的に14%高く見積もっていることが分かった。この結果は近くシミュレーションに組み込まれ、補正される予定である。また系統誤差を詳細に検討した。その結果、電源の揺らぎから来る系統誤差が最も効き、トータルで10%であり、目標とした絶対感度の精度を達成した。これらの測定、解析結果は現在論文にまとめているところである。 また、氷中に埋められた出力光量の分かっている較正された標準光源を用いて、南極氷河中での氷の性質が調べられた。この結果今まで46%あった観測とシミュレーションのずれを22%まで低減させることができた。
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