近年、原子核における魔法数が安定核と不安定核では異なることが理論・実験の両面で活発に議論されている。本研究では、多体理論unitary-model-operator approach(UMOA)の方法を用い、pf殻領域までの原子核に対して現代的核力から出発した第一原理的な構造計算を行い、1粒子準位構造(殻構造)を調べることによってこの問題を微視的立場から解決することを目指している。さらに、現代的核力から微視的に導出した有効相互作用を用いた大規模殻模型計算により、炭素同位体を中心とした不安定核におけるエネルギー準位や電磁遷移強度について微視的立場からの理解を深化させることも本研究にけるもう一つの大きな課題である。 これまでに、最も典型的な二重閉殻核である16^Oの基底状態エネルギーやその近傍の原子核の1粒子あるいは1空孔状態における殻構造の他、中性子過剰核^<15>Cにおける1粒子準位構造、さらにはより重いsd殻領域である^<40>Ca近傍核における基底状態の諸性質をUMOAの方法により微視的に記述することに成功してきている。また、最近になってpf殻核である^<56>Niに対する計算も可能となった。 さらには、新たに開発した大規模殻模型計算の方法によって、近年実験的に測定され話題となっている16^Cにおける第一励起2^+状態から基底0^+状態への抑制された電気4重極遷移確率を矛盾なく説明することにこの種の微視的な計算方法では世界で初めて成功した。 また^<18>Cに対する電気4重極遷移確率の計算結果はその後報告された実験値と極めて近いことが確認され、本方法の信頼性が高められた。現在、さらに重い炭素同位体や酸素同位体に対する大規模殻模型計算が進行中であり、この領域の原子核に対する微視的立場からの統一的理解が深まることが期待される.
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