本研究は長基線ニュートリノ振動実験(T2K実験)において、ミューニュートリノから電子ニュートリノへの振動(υ_μ→υ_e振動)における水チェレンコフ検出器中のバックグランドについて研究することが目的である。本年度は疑似チェレンコフ光生成器(コーンジェネレータ)を用いた電子ニュートリノ事象検出効率のキャリブレーションについて研究を進めた。バックグラウンド事象の多くは中性パイ粒子崩壊事象の誤認識によるものであり、この擬似パターン光を用いて、電子・中性パイ粒子事象の識別効率のキャリブレーションを行うことによりバックグラウンド測定の精度向上が大いに期待される。 まず生成器の放射分布測定のための測定器改良を行った。実際にキャリブレーションを行うには、あらかじめ生成器の放射パターンを精密に測定する必要があり、以前の測定器では精度が不十分であった。今年度その測定装置の改良を完成させ、放射パターンのデータを取得した。そのデータに基づいて水チェレンコフ検出器で期待されうる事象をシミュレーションで作成した。 また実際T2K実験で使われるスーパーカミオカンデで擬似チェレンコフ事象のデータで取得を行い、シミュレーションと合わせて解析を行うことができた。これによりT2K実験での疑似チェレンコフ光生成器による電子・中性パイ粒子事象間の識別効率の検証が期待される。
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